「癌の治療で住宅ローンが払えない」ときの考え方

癌の治療と住宅ローン

このページでは、になり住宅ローンの返済が難しくなってきたときの考え方について状況別にアドバイスさせていただくとともに、癌になられたご相談者様がどのような判断をされたのか、具体例をご紹介します。

住宅ローンを組んでいる多くの方にとって、癌は、身体への負担の上に癌の治療費や収入減少による家計へのダメージという不安が覆いかぶさる病気です。
1人もしくは家族の中だけで抱え込まず、医療費や家計については専門家へも積極的に相談してください。癌になり住宅ローンの支払いが厳しくなったとき、解決策はいくつもあります。
『癌の治療費』について、『住宅ローンの支払い』について、また、『税金』、『教育費』、『各種ローンや借入金』などの支払いについて、家計を組み立てる道が見つかるかもしれません。

名古屋住宅ローン相談室代表

癌の治療費や収入減少で住宅ローンの支払いが難しくなっても、ご相談いただけるタイミングが早ければ早いほど、選択肢は広がっています。

癌になって住宅ローンの滞納が進む段階分け

癌が原因で住宅ローンが苦しい、段階

住宅ローンの支払いが滞る状況には、段階や流れがあります。
『今はまだ大丈夫だけど今後が心配』という状況になった時点でできるだけ早く専門家へ相談することが大切です。 1人で抱え込んでしまうと、『貯金の切り崩し、カードローンの借入をして賄う』という段階、そしてそれが続かず『住宅ローンの滞納が始まる』という段階へと進んでしまうかもしれません。

特に、ご家族のどなたかが癌を患っている場合には、『癌の治療を継続するか、もしくは中止するか』という判断も絡んでくるため、厳しい選択を強いられることで一層精神的に追い詰められて動けなくなることがあります。アドバイスをもらえる専門家に相談することで冷静に判断するようにしてください。

癌になって住宅ローンが払えない:段階①
『今はまだ払えているけれど、これからは住宅ローンを滞納するかもしれない』

「今月・来月は住宅ローンが払えるけれど、これからどうなるかわからない」という段階についてです。この段階であるならば、まずは住宅ローンの借入をしている金融機関へ相談へ行ってください。

住宅ローンの支払い方法について、『借入期間を伸ばして月々の返済額を少なくする』『一時的に利息のみの返済をする』など、住宅ローンのリスケジュールに対応してもらえる可能性があります。

リスケジュールについては下記ページもご確認ください。
住宅ローンのリスケジュールとは

リスケジュールは一定の条件に当てはまる方にとっては有効な手段ですが、全ての方にとって最善策となるわけではありません。
リスケジュールは月々の支払額を減らすことができるといっても、住宅ローンの返済を続けなければいけないことは変わらりません。しかも、利息分が膨らみ総返済額は増加します。
『家計の収支バランスが崩れている』『癌の治療が長期化する可能性が高く癌の治療費の目安・今後の収入について不確定要素が多い』といったケースでは、リスケジュールではなくもっと根本的な方向転換が必要になると考えられます。

例えば下記に該当する方は、リスケジュール以外の解決方法を検討するべきです。
■ 癌の治療が今後どれだけ長期化するかわからない、1年以上かかる可能性が高い
■ 癌を治療する方針についての今後の動向が読めないため復職(収入が戻る)の見込みが立たない
■ 傷病手当金などの制度による収入、もしくは他の家族による収入がない
■ 生活費・治療費に充てるための預貯金がほとんどない
■ 住宅ローンの他に、カードローンなどの借入等がある
■ 固定資産税など税金について滞納がある
■ 癌を患う前から住宅ローンの滞納があった
■ 住宅ローンの完済年齢が現時点で70歳を超えている

上記に当てはまらず、住宅ローン返済の困難が一時的であることが予測でき、1年以内に収入が戻る可能性の高い方であれば、リスケジュールのメリットも大きいかと思います。

癌になって住宅ローンが払えない:段階②
『今月の住宅ローンの支払いが厳しい。癌の治療費と住宅ローンの支払いどちらかしか続けられないかもしれないと考え始めている』

「今月の住宅ローンの支払いができないかもしれない…」という場合は、段階①でご紹介した内容に加えて、他の支払いとのバランスも冷静に判断してください。
特に、癌の治療費の支払いを迷われている場合には、家計の状況について医療従事者の方へ相談されることを強く勧めます。

弊社のお客様でも、医療従事者の方に相談する事で治療費を分割にする、もしくは、知らなかった制度を教えてもらうなど、予想外の解決策が見つかって癌の治療を継続された方がいらっしゃいます。
もちろん、(家族に迷惑をかけたくない)という想いのもとお子様の教育費やその他の支払いを優先される方もいらっしゃり、何が正解と一概には言えません。ただ、制度の利用や家計の見直しで、想像していなかった解決策が見つかる可能性があることも知ってください。

治療期間が期間限定であり、かつ、健康保険適応の治療法であれば、ほとんどの方が迷わず癌の治療を続けられるかと思います。
癌の治療を継続しようか迷われるのは、下記のような方ではないでしょうか。

  • まず一定期間の化学療法を行い、その後、今後の方針を決めることになっている
  • 再発された方が化学療法を行う

『今後どうなるかわからない』『長期化する可能性が高い』、という事態では、先の見えなさから経済的な不安が高まります。
そこに加え、お子様の受験等教育費が必要になる状況であったり、そもそも税金滞納など赤字家計だった、といった場合には、癌の治療継続を躊躇されこともあるかと思います。
実際、医療費の問題で治療の中止を検討する方は珍しくないという報告もあります。
参考:「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究

落ち着いて考えていただきたいのは、ご自身・ご家族にとっての判断基準を明確にし、それをご家族間で共有しておくことについてです。
ご家族に迷惑をかけたくはないと、ご自身の癌の治療費よりもお子様の教育費や住宅ローンを優先される方もいらっしゃれば、 癌の治療を優先してご自宅を手放す方もいらっしゃいます。
ここに正解はありませんが、 納得がいくまでご家族で話し合われること、また、ご家族だけではなくお金の専門家への相談も併せられることが大事ではないかと思います。
住宅ローンの支払いなど、不動産から波及する問題については弊社もお力添えさせていただけます。

癌になって住宅ローンが払えない:段階③
『貯蓄の切り崩し、癌保険の給付金で住宅ローンを支払っている』

これまでの蓄えを切り崩す、もしくは、がん保険の給付金で住宅ローンを支払っている場合には、冷静になって今後の見通しを考えてみてください。
癌の治療が長期化した場合、いつまで現在の状況を続けていけるのか、もしくは続けていくべきなのかを、まだ余裕があるうちに考えておくことはとても大切です。

お子様の年齢やご家族構成によっても考える基準は異なってくるかと思います。
多くのケースで共通しているのは、
・お子様がまだ小さいのであれば教育資金がどれだけ必要になるのか、
・住宅ローンが残っている場合には本当に今後も支払っていけるのかの判断、
などです。預貯金に余裕がある段階から冷静に見極めてください。

繰り返しになりますが、
「預貯金が減るばかりで先の見通しが立たない」
と精神的に追い詰められた状態になる前に、お金に関する専門家へ相談されることをお勧めします。

住宅ローンについては、まずは現在の物件価格を知り、住宅ローン残債とのバランスを把握しておくことも今後について考える検討材料になるため早めに査定をしておくこともお勧めです。
不動産査定についての参考ページ:不動産査定の概要と注意点

癌になって住宅ローンが払えない:段階④
『癌の治療を中止するか、住宅ローンの支払いを諦めるかで迷っている。(税金や他の支払いにも問題を抱えている)』

癌の治療費と住宅ローン、どちらかしか難しいというかなり切羽詰まった状況です。
この段階では、お1人で冷静になって考えることは難しい可能性も高いため、できるだけ早く専門家へ相談された方がいいかと思います。
医療費を絡めた問題を得意とするファイナンシャルプランナーや、税金の滞納額が大きい場合には士業の先生、住宅に関することなら不動産会社へ相談してください。

また、住宅を手放すことも検討されているならば、まずは早く不動産の査定をすることをお勧めします。
住宅の売却価格で住宅ローンの支払いが解決できるのであれば、それがわかるだけで随分と気も楽になります。
一方、住宅の売却価格で住宅ローンが完済できないのであれば、任意売却の経験があり、かつ、信頼できる不動産会社を探す必要が出てきます。任意売却を多く扱う不動産会社では、癌をきっかけとした家計の収支バランスの崩れに対してアドバイスできる経験を多く持ち合わせているはずなので、家族の生活を守るために家計の優先順位をどうつけたらいいのか、客観的なアドバイスを受けることもできて視野を広げることもできるかと思います。

癌になって住宅ローンが払えない:段階⑤
『カードローンやキャッシングで住宅ローンを支払っている。税金まで手が回らず滞納している』

住宅ローンの支払いを収入で賄いきれなくなっている場合、固定資産税などの支払わなければいけないお金に手が回っていない場合には、売却について真剣に考える必要があります。まずは住宅の資産価値を調べて住宅ローン残債とのバランスを確認してください。

家族の思い出が詰まっている住宅、子供の学校の関係で引っ越しすることが難しい住宅、など、住宅には離れられない理由がいくつもあるかと思いますが、収入で住宅ローンを賄いきれないのであれば、考え方を変えるしかありません。現実を直視する必要があります。

また、税金の滞納は後々まで大きなダメージを残します。自己破産をしても税金の支払いからは逃れられない上、税金の遅延損害金は非常に高額だからです。
住宅ローンの支払いを他からの借入で賄っていたり、税金を滞納している場合には、できるだけ早く第三者からの意見を求めるようにしてください。
税金についての参考ページ:
税金の滞納について

癌になって住宅ローンの支払いが難しくなったお客様の決断例

癌が原因で住宅ローンが苦しい、決断例

ご家族のどなたかが癌になり家計のバランスが変化した時、どう決断された方がいるのか。
弊社にご相談くださったお客様の事例をご紹介します。

癌になって住宅ローンの支払いが難しくなったお客様の決断例:
癌になった旦那様を奥様が説得して住宅を売却

  • 旦那様の抗がん剤治療が4年近く続いている
  • 高額療養費に該当するものの月々の治療負担が継続的に5万円ほど
  • お子様が中学生と高校生になり、受験など教育費用の必要性が増していた
  • 住宅ローンの支払いが15年以上残っていた
  • 営業職として働いていたところ、癌の治療による副作用や体力低下のため勤務先の配慮で事務職への配置換えがあり収入が減っていた

こうした状況の中で、今後どれだけ長期化するか判断ができない癌の治療について、旦那様は独断で治療を断念することを決められたとのこと。
しかし、(治療を続ければ100%癌が治るとは限らなくても、それでも、お医者様から説明を受けた治療の可能性やメリット・デメリットを考えればこれまで続けてきた癌の治療をやめさせるわけにはいかない)と決意した奥様が、最初はお1人で、弊社へ相談に来てくださいました。

来社後すぐに、説明いただいたこと、ご相談いただいたことは下記の内容です。
・家計を見直す努力は癌が分かった当初から継続しいる
・お子様の教育費用を削ることは避けたい
その上で、
・旦那様の癌の治療を続けるために住宅の売却を検討したい

奥様が独断で売却に向けて動かれている状況があったため、まずはご主人とお話しさせていただくことから段取りを進め、弊社が間に入って奥様のお気持ちと旦那様のお気持ちを整理させていただいたところ、 お2人の意見は ざっくりといえば次のとおりでした。

旦那様:
・家族に辛い思いをさせてまで治療を行う意味はない
・家族には、広い自宅でいつまでものびのび暮らしてほしい

奥様:
・子どものためにも、旦那様にはできるだけ長生きしてほしい
・子どもは時が経てば家を出るのだし、住宅ローンよりも癌治療を優先させたい

ご家庭内の問題ではありますが、こうした感情的な話は、第三者が入ることでお互いの気持ちを相手にまっすぐ届けることができる場合が少なくありません。
こちらのご家族の場合には、結果として、ご自宅を売却して月々の支払い負担を減らし、ご主人の癌治療を継続されました。

癌になって住宅ローンの支払いが難しくなったお客様の決断例:
ご自宅を売却して病院近くのマンションへ夫婦で引っ越し

旦那様が早期退職をし、退職金を活用してご夫婦で飲食店を営まれていたところで、奥様の癌が発見されたご相談者様の事例です。住宅ローンも残り20年近く残っている状態でした。
奥様はせっかくはじめた店への想いや、手に入れたご自宅への気持ちが強くおありでしたが、旦那様はご自宅売却への強い意志をもって弊社にお越しくださいました。

すぐに売却の準備を進めたところ、土地が高騰している場所だったこともあり住宅ローン残債よりも高い値段で住宅を売却することができました。旦那様は「このお金を妻の癌治療費に充てられる」とほっとされたご様子でした。

また弊社では賃貸物件の取引も取り扱っているため、お引っ越し先には奥様が通われる病院のすぐ近くの賃貸マンションをご紹介させていただくことができ、その点でもお喜びいただくことができました。
ご自宅の売却では、再出発に向け、新しく住まわれる物件選びも重要です。
住宅ローンの問題を抱えて物件の売却を検討される場合には、売却後に生活する場所まで一緒に探してくれる不動産会社を選んでください。

癌の治療費と収入の減少とで家計のバランスが崩れた場合の、住宅ローンとの向き合い方・考え方についてまとめました。

住宅ローンの支払いがまだ数ヶ月はできるという段階で、かつ、癌を治療するための家計への影響が1年程度であることが予測できているのであれば、借入をしている金融機関へ相談することが得策だとご紹介しました。

また、癌の治療・医療費の負担が重くなってきていたら、医療従事者の方へも相談してみてください。経済的な理由で癌の治療方針の変更や癌治療中止を相談する患者様は、珍しくないという報告もあります(※)。
決して特別なことではありませんので、躊躇したりはしないでください。

そして、住宅ローンの負担が大きくなったり、今後住宅ローンの返済が難しいと感じるようになったら、不動産会社へご相談ください。
売却以外にも、選択肢を広げてもらえる可能性が高いかと思います。
弊社でも、いつでも無料でご相談に応じさせていただきます。

(※)「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」より