民事再生で再生中に
任意売却の選択ができるかどうか

民事再生と任意売却

住宅ローン以外にも負債が増えてしまった方が選択できる方法に、民事再生(個人再生)という手段があります。
詳しくは本文でご説明しますが、住宅を手放さずに住宅ローン以外の債務を圧縮できる方法です。メリットの多い債務解決手段ではありますが、先を見て、計画をして、覚悟もして選択しなければ、事態を悪化させてしまう方法です。

このページでは、民事再生についての概要、そして、民事再生中に(民事再生が承認されて負債返済中に)任意売却が選択できるかどうかについてをまとめています。
民事再生や任意売却についての情報を集めている場合にご活用ください。

ただ、インターネット上では一般論しかご紹介できないことも事実ですので、借金の返済や住宅ローン問題を抱えていらっしゃる場合には、できるだけ早く、お近くの専門業者へ個別に相談されることをお勧めします。

任意売却については、任意売却業者の選び方についてまとめたページもありますので、そちらをご参照の上ご自宅近くの会社を探してみてください。
任意売却業者の選び方

名古屋住宅ローン相談室でも、ご対応可能なエリアは無料でご相談にのらせていただきます。

名古屋住宅ローン相談室代表

民事再生も任意売却も、手段の1つです。 安心して生活できる環境づくりのために、困ったら、専門家へ相談してください。

名古屋住宅ローン相談室は、いつでもお待ちしています。

民事再生で再生中の任意売却
このページで対象としているケース

このページの「民事再生で再生中の任意売却」というテーマでご説明するケースは、 民事再生を申請して、認められて、住宅ローン以外の借金について返済計画が立て終わり、ご返済をしている最中のケースについてです。
民事再生を適用してご返済をしている方が任意売却できるのかどうかについて取り上げていますので、今、民事再生の申請をしている方や、民事再生で圧縮した借金の返済が完済した方のケースではありません。あらかじめご了承ください。

民事再生(個人再生)についての基本的な内容

民事再生とは

まずはざっくりと、民事再生についての基本的な概要を確認します。

民事再生の概要

民事再生は、住宅ローンを抱えていらっしゃる方が、住宅ローン以外の借金が増えてしまい借金を返すことが難しい、という場合に使う手段です。
民事再生のメリットとしては2つ挙げられます。
1つは住宅ローン以外の借金が最大で5分の1まで圧縮できること
もう1つは自宅を手放さなくてもいいことです。

補足:
民事再生のメリットを理解するためには他の方法との比較がわかりやすいかと思います。
個人の債務整理では民事再生の他に任意整理、自己破産、という方法が取り上げられます。
それぞれの方法についてざっくりと比較をすると下記のとおりです。
任意整理は1件1件の債権者と相談ができるため圧縮する負債としない負債を自分で決めることができるというメリットがあり、一方で、元本を減らすことはできないというデメリットがあります。
自己破産は全ての債務について返済義務を免れるというメリットがある一方で、ほとんどの財産を手放さなくてはいけないというデメリットがあります。官報に記載される、信用情報機関に事故情報が登録される(いわゆるブラックリストに載る)ため一定期間新たな借り入れができない、特定の職種に一定期間就くことができない等のデメリットもあります。
民事再生(個人再生)は住宅ローンを残してそれ以外の借金を元本を含めて最大5分の1まで大幅に圧縮できるというメリットがある一方で、所有する財産以上は返済しなければいけない、その他自己破産と同様に保証人への連絡がいく、手続きに時間がかかる(6ヶ月程度)、官報に載る、ブラックリストに載る、といったデメリットがあります。

民事再生について詳しくご紹介をするのは別のページに譲りますが、ここではもう少しだけ細かく分けます。
民事再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2つの種類があります。
どちらかを選ぶことになるのですが、どちらにしても、住宅ローン以外の借金を最大5分の1まで圧縮できて、それを3年もしくは特例により5年で返済していくことができます。

民事再生で決められた返済計画が予定通り払えなかった場合

民事再生が承認されて、
「さぁここからは住宅を残しながら圧縮した借金を払って行こう」
と思ったんだけれども、何らかの事情で払えなくなってしまった場合。
この時どうなるのかについてのご説明です。

民事再生で決められた計画通りに借金の返済ができない場合どうなるのかは、3つに分かれます。

1つ目、民事再生で認められた借金の圧縮がなかったことになります。
これが基本的な路線で、 ほとんどの場合、元の借金額に戻ります。

2つ目は、返済する期間を少し延長して月々の返済額を安くするという方法。
ただしこの場合でも最長は5年間ですから、3年で組んでいる方は最大2年間延長ができますが、最初から5年で組んでいると延長は厳しいです。

3つ目の方法は、圧縮された借金の4分の3以上を既に払い終えている方の場合です。
この場合は、状態によっては残っている4分の1近くを払わなくても済むという抜け道が用意されています。
ただしそもそも圧縮された借金ですから、たとえ4分の3を払い終えていると言っても、残りの免除については厳格なルールがあります。
「会社が倒産した」等の、ご自分ではどうしてもコントロールできなかった要素が出てきてしまった状況の時のみ適用される可能性がある、そういう特例です。

ここまでは民事再生の基本的な内容についてのご紹介でした。
ここから、民事再生で圧縮した借金を返済中だけれど、やっぱりどうしても払いきれないから任意売却を検討したい、という状況についてのお話です。

民事再生を申請した後の任意売却について

民事再生を申請して承認されて負債の支払いをしてきたけれど、どうにもこうにもいかなくなってやはり任意売却をしたいという場合。
結論から申し上げると、原則、可能です。
ただ、いくつかの状況・条件の設定があります。

民事再生をして圧縮した借金を返済している最中に任意売却ができるケースとは

そもそも民事再生は住宅ローンを除いた負債を圧縮する、つまり、住宅を持ち続けながら負債を圧縮して生活を再生する手段なので、民事再生を申請している最中に任意売却で住宅を手放したいというのは、矛盾してしまいます。
そのため、民事再生が認められた後で任意売却をするためには、民事再生で認められた債務の圧縮が元に戻った状態でなくてはいけません。

民事再生の概要をご説明したときに、民事再生の申請時に計画した支払いができなくなった後の動きには3つのケース、があるとご紹介しました。

3つのケースとは、
①民事再生で認められた債務圧縮が元に戻ってしまうケース
②返済期間を延長できるケース(最長5年まで)
③圧縮した負債額の4分の3以上を支払っている場合で、残りの負債が免除されるケース
でした。

民事再生をしたけれど決められたどうにも計画通りに返済ができない、という場合で任意売却ができるのは、①の民事再生で認められた債務圧縮が元に戻ってしまった方です。

任意売却をする流れ

民事再生で圧縮した債務の返済が滞っているケースでは、住宅ローンの返済も厳しくなっている場合が少なくありません。
住宅ローンの返済を滞納すると、債権者は、期限の利益の喪失という、分割払いの権利を取り上げる措置をとります。
一般的には3ヶ月〜6ヶ月くらいの滞納で期限の利益が喪失されます。

このまま何もしないで放っておくと、任意売却ができなくなり、競売という手続きで強制的に住宅が換金処分されます。

競売のデメリットは他のページでも取り上げていますが、ざっくりといえば、
任意売却に比べて安値で売却されてしまう(=住宅ローンの残債が多く残ってしまう)
住んでいる最中の自宅の写真が公開されてしまう
退去時期についての交渉ができない
等というデメリットがあります。
任意売却をした後も、当たり前ですが皆様の人生は続いていきます。むしろ、毎日をよりよくより気持ちよく生活するために任意売却という手段を取るのですから、再スタートを順調に切るために、残債を減らす・プライバシーを確保する・退去時期を調整するといった段取りはとても大切です。

「民事再生で債務を圧縮したけれど計画通りに返済ができなかった」→「住宅ローンの返済も厳しいから住宅を任意売却で手放したい」。
これは原則可能ですが、所定の手続きが滞りなく進む必要があります。

所定の手続きとは、不動産鑑定士によるプロの査定で、「任意売却だったらこのくらいで売れる」という目安の売却価格を明らかにし、債権者に提示をし、債権者から「任意売却を進めてもいい」と承認を得るという手続きです。

不動産査定や金融機関との交渉には任意売却特有のコツやポイントがありますので、必要な手続きを進める際には任意売却の経験が豊富な不動産会社に相談するようにしてください。
参考ページ:
任意売却業者の選び方 不動産査定について

民事再生を申請した後に任意売却をするときの、住宅ローン以外の借金について

民事再生で残った負債の処理

「借金の返済が難しい」だけど「住宅は残したい」
ということで民事再生を選択したものの、やっぱり返済しきれずに住宅を手放すことになった、という場合、住宅ローン以外の借金をどうしたらいいのかが気になるかと思います。

残った借金の処理については2つの方法が挙げられます。
・自己破産をする
・示談で話をつける
という方法です。
インターネット上では、「時効になるまで逃げ切る」という方法が紹介されていることもありますが、非常に消極的な方法で一般的な生活をする方が採用できる選択肢ではないので、このサイトでは取り上げません。

ここで、民事再生中の方には知っておいていただきたいのですが、民事再生の2つの種類、「小規模個人再生」と「給与所得等再生」のうち、「給与所得等民事再生」を使うとその後7年間は自己破産をしても免責がされないというルールです。
ですから、民事再生のうち「給与所得等民事再生」を選択した場合にも任意売却はできるのですが、住宅ローンも含めた借金、つまり残った負債については、自己破産による免責が受けられないということになります。
実務上は示談で話をつけていくことになるかと思います。

結論:
民事再生で圧縮された借金を返済中でも任意売却は可能。注意点は・・・

民事再生と任意売却、結論

民事再生で住宅ローン以外の借金を圧縮したけれど、やっぱり計画通りに返済ができなかった、という場合、任意売却で住宅を手放すことは可能です。

ただその場合には民事再生で認められた分の債務圧縮はなかったことになるため、当初通りの負債を処理しなければいけなくなります。
負債の処理には「自己破産」または「示談で話をつける」という方法が採用されることが基本的な路線ですが、民事再生の中でも「給与所得等民事再生」を選択している場合には負債の処理に自己破産を選択することができない(自己破産をしても債務の免責が認められない)ため、実質的には示談で話をつけていかなければいけなくなることに注意してください。

最後に、民事再生をしたけれど返済や生活が苦しくなってしまうケースでは、そもそもの民事再生に無理があったという場合が少なくありません。 このページを読んでいらっしゃる方の状況にもよりますが、今、民事再生を検討されている状況ならば、本当に民事再生で家計が成り立つのかを、一度冷静になって客観的に検討し直してください。

また、民事再生をしたけれど、やはり自宅を手放すことを検討されている状況にいらっしゃるならば、家計の立て直し方から相談に乗ってもらえる任意売却に詳しい不動産会社や、士業の先生の事務所など、専門家のもとへ相談されてください。
その場しのぎでの対策ではなく長い目で見て家計を立て直すにはどうしたらいいのか、第3者からアドバイスをもらうことで、苦しい状況であっても打開できるはずです。

民事再生も任意売却も債務整理も、家計を正常に戻して生活を続けていくための手段です。 名古屋住宅ローン相談室では、住宅ローン問題だけでなく、債務整理や事業再生もお手伝いさせていただきます。