代位弁済と任意売却
〜任意売却を検討するタイミングについて〜

名古屋住宅ローン相談室代表

任意売却を早めに検討した方が残債を減らせる可能性が高まります。
もちろん、早めに検討して専門家に相談することは、任意売却以外の選択肢を見つけることにも役立ちますからそういう点でも初動の速さは大きなメリットがあります。

ただ、相談した先で断られたり否定されたりすると、心理的に大きな影響を受けてしまいますから、相談先には気をつけたいものです。ページの最後で取り上げているので、メモ程度でも覚えておいていただけたらと思います。

代位弁済と任意売却

代位弁済という行為の説明、そして、代位弁済が済むことで何が変わるのかをまとめました。
任意売却について、代位弁済の前から考えていた場合と、 代位弁済の後から考え始めた場合とで何が違うのかについてもまとめています。

任意売却を検討するタイミングは、早すぎて困るということはありません。
「督促状たまっている」
「代位弁済の通知が届いた」
という状態はもちろん、
「住宅ローンを滞納してしまった・・・」
「来月の住宅ローンが払えないかもしれない」
「今は払えているけれど、今後どうなるかわからない」
という状況でも、任意売却を選択肢の1つに加えることが前向きな未来につながると考えています。

このページでは任意売却を検討するタイミングについて、ターニングポイントの1つである代位弁済を解説しながらまとめています。

代位弁済について

代位弁済について

住宅ローンの返済が一定期間遅れると、期限の利益が喪失され、残った住宅ローン全額の一括返済を求められます。しかしもちろん一括返済ができる方は少なく、その後、代位弁済が行われます。
代位弁済とは、保証会社が契約者に代わって銀行に残っているローンを全額返済する行為です。

【注意】:住宅金融支援機構には代位弁済がありません
住宅金融支援機構の場合は代位弁済という仕組みはありません。期限の利益の喪失があるだけです。住宅金融支援機構の他にも一部の銀行では代位弁済という仕組みはないため、ご自身の契約に保証会社がついているかどうかは契約書をご確認いただくか、もしくは、不動産会社や専門家へ問い合わせてご確認ください。

代位弁済をする保証会社とは?

ほとんどの銀行が出している住宅ローンは、銀行がお金を貸している裏で、保証会社による保証がついています(フラット35など例外もあります)。 この保証会社とは、多くの場合、銀行が出資した子会社です。 例えばみずほ銀行であればみずほ信用保証株式会社、三菱U F J銀行であればみずほ信用保証株式会社、りそな銀行であればりそな保証株式会社、といった子会社が保証会社になっています。

銀行は融資をする役割、保証会社は債権を回収する役割、と役割分担ができているのです。

代位弁済が済んでいるとき、期限の利益は喪失しています

期限の利益というのは、平たく言えば、借りたお金の返済を分割払いできる権利です。
例えば3000万円を借りたとして、本来であれば期日を決めてそれまでに全額返済しなければいけないところを、特殊な取り決めをして、金利を払う代わりに分割払いの権利を取得しているという仕組みが住宅ローンの返済です。
代位弁済が済んでいるというのは、保証会社が全額立て替え払いをしたということ、つまり、期限の利益が喪失してしまった後の状態です(正確には、「期限の利益の喪失」→「代位弁済」という順番です)。

代位弁済として全額立て替え払いをした保証会社は、立て替えたお金を請求してきますが、期限の利益を喪失している状態のため、住宅ローンの残額を一括で求めてきます。
もちろんそこで一括返済できる方はほとんどいませんから、換金処分として売却の手続きが進められます。

任意売却は、代位弁済が済んでから動き出すことができます

『任意売却を検討する時期に早すぎるということはない』 と、このサイトでは何度かご説明しています。
「今は滞納していなくても今後は支払いが難しくなるかもしれない」という段階から任意売却について検討することは、とても建設的な姿勢だといえます。
その理由はまた後述しますが、単純に言えば、準備を早くから進めておけばおくほど、売却後の残債を減らすことができる可能性が高くなるからです。

一方で、任意売却について実際に動き始めることができるのは、代位弁済が済んでからとなります。
任意売却は、売却価格よりも住宅ローンの残債の方が高いという、借り入れた住宅ローンの返済ができない中での特殊な売却になるため、関係者との調整や状況の整理など一定の手順を踏む必要があるからです。

補足:期限の利益の喪失以後の遅延損害金に注意してください

多くの方が見落としがちなポイントがあるので、注意書きを補足します。
遅延損害金についてです。
住宅ローンの返済が滞ると、ペナルティーとして遅延損害金というお金が請求されます。
具体的には、遅れている分のお金に対して14%もしくは14.6%という年利で課せられるわけですが、この遅延損害金、分割払いが遅れている時と一括払いが請求されてからでは、かなりの差が出ます。

例えば2000万円を30年の住宅ローンで借り入れて月々6万円弱返済していたとします。
契約内容にもよりますが、大体月の金利が4千円程だとすると、分割払いを滞納しているだけでは大体1月580円位の遅延損害金です。そこまで頭を抱えるほどの金額ではないかと思います。
ただこれが、仮に残り1500万円のローンがある段階で期限の利益を喪失して遅延損害金が発生するとすると、月に18万円程の遅延損害金が発生してしまうことになります。
この状態で何ヶ月も経ってしまうと夫妻ばかりが大きくなってしまうので、期限の利益の喪失以降はできるだけ早く売却を成立させることが先決とも言えます。

売却価格を高く設定するのか、できるだけ早く売却するのか、と選択肢は増えていきますが、何より大切なのは売却後の残債を減らすことだという軸をぶらさないで判断していただけたらと思います。

<保証会社から任意売却を勧められたらどうしたらいいですか・・・?>
「保証会社から任意売却を勧められたのですが…」
というお問い合わせをいただくことがあります。
代位弁済の通知が届く頃は、知らない単語が書いてある書類が次から次へと送られてきたり、銀行の融資担当者から保証会社の担当者へ変わったり、と不安なことが続き、どうすることが適切なのか分からずに精神的にまいってしまっている方も少なくはありません。

それでも、この時期だからこそ、1つ1つの書類を見逃さずきちんと対応していき、できるだけいい形で新しい生活をスタートさせられるよう計画を立てることが大切です。
保証会社からの任意売却の勧めは、代位弁済が済んだ後任意売却という方法を選択できるチャンスです。これを無視すると競売の手続きが進んでしまいますので、注意してください。

任意売却は、競売と比べるとメリットの多い売却方法です。下記のページもご参考ください。
任意売却のメリット・デメリット

補足:
保証会社やサービサーは、できるだけ多く債権を回収するために競売よりも高値で売却できる可能性が高い任意売却を推奨しています。例えば下記のように 住宅金融支援機構のホームページでは任意売却が推奨されています。

    任意売却をお勧めする理由
  1. 通常の不動産取引として売買されるため、一般的に競売より高値で売却できることが期待され、お客さまの負債の縮減につながります。
  2. 任意売却パンフレットに定める手続にご協力いただける場合、お客さまの状況により売却代金から不動産仲介手数料、抹消登記費用等を控除できる場合があり、また、お客さまの残債務の状況等により延滞損害金減額のご相談に応じられる場合があります。
  3. 裁判所による手続である競売と比べると、ご自宅の引渡時期についての調整がしやすく、ご自宅退去後の生活設計が立てやすくなります。

参考:住宅金融支援機構のホームページ「融資住宅等の任意売却」より

代位弁済と任意売却について

任意売却のタイミングと代位弁済について

代位弁済について、用語の説明や代位弁済の前と後で状況がどう変わるのか等、ご説明してきました。
ここから、任意売却を考えるのは早い方がいい理由についてまとめます。

任意売却を考え始めるタイミングに早すぎることがないのはなぜ?

代位弁済が済んでからでは遅延損害金が高額になることをご説明しました。
一方で、実際に任意売却の手続きに入ることができるのは代位弁済の通知が届いてからであるということもご説明しています。
任意売却の開始時期のことだけに注意を向けていると、
「前もって考えていてもどうせ任意売却ができないのであれば、任意売却ができる(任意売却ができてしまう)状況になってから考えたって同じじゃないか。任意売却を考えるタイミングに早すぎることはないなんてでまかせではないか?」
と考えられるかもしれません。
しかし、遅延損害金のことを考えると、期限の利益を喪失して一括返済ができないのであれば可及的速やかに売却をするべきであることはお分かり頂けるかと思います。
だからこそ、期限の利益を喪失して、代位弁済がなされてからできるだけ早く売却につなげるために、代位弁済の通知が届いてから動き始めるよりも、前もって任意売却の段取りを立てておく、また、任意売却が成功した後の生活について計画を立てておくべきなのです。

銀行の担当者に任意売却の相談をしたらうまくいかない?

「銀行で任意売却の相談をしたら、できないと言われました。どうしたらいいですか…?」
ときどきお電話でこういったお問い合わせをいただくことがありますが、これは仕方がないかもしれません。
ほとんどの銀行の融資ご担当者様はそう答えるしかないからです。
銀行は融資をする役割を担い、債権の回収は保証会社やサービサーが担当する。
そうした役割分担があるため、多くの銀行には任意売却を承認する権限がないのです。

「住宅ローンの返済に行き詰まってしまったから、住宅ローンを返済している銀行に行って任意売却の相談をしてみよう」
こう考えることはとても自然な流れかと思いますが、銀行の融資のご担当者様の仕事は『住宅ローンの枠組みの中で1円でも多く回収すること』であるため、任意売却については管轄が違います。
それぞれの役割をあらかじめ把握して、任意売却については任意売却を扱っている専門家や不動産会社に相談されることが得策ではないかと思います。

代位弁済と任意売却をテーマにまとめました

保証会社やサービサーの存在、また、銀行の融資の担当者と保証会社の担当者との役割分担など、ややこしい部分もあったかと思います。
任意売却は手続きが複雑で、また、状況ごとに絶妙な判断が求められる特殊な売却方法です。
インターネットに溢れている情報だけでは不安や問題を大きくしてしまう危険性もあるので、 迷っていることや困っていることがある場合にはできるだけ早く専門家へ相談されることを推奨します。

名古屋を中心とした東海3県であれば弊社も全力でお手伝いさせていただきますので、ご連絡ください。