不動産一括査定サイトの売却価格は目安の金額
住宅ローンの残高は確定している金額

不動産の一括査定サイトと住宅ローン残高の関係

インターネット上で比較的手軽に利用できることもあり、不動産一括査定サイトはよく知られるようになりました。
「複数の不動産会社から一度に査定してもらえるから相場がわかって安心」
という印象を持っている方もいらっしゃると思いますが、不動産一括査定サイトの売却価格はあくまで目安の金額です。

一方で、住宅ローンの残高は、不動産査定一括査定とは違い、確定している金額です。
住宅ローンの残高という確定している金額と、不動産査定という目安の金額を同じように扱って計画を立ててしまっては、後々のトラブルを招く結果になりかねません。

このページでは、不動産一括査定サイトから出された目安の金額をを元に、住宅ローンの残高を含めた財産分与の計画を立ててしまったリスクを具体例とともにご紹介します。

不動産査定をご依頼される際に把握しておくべき不動産査定の意味合いも併せてまとめていますので、一般の売却・任意売却・財産分与等で不動産査定を考えていらっしゃる場合にはぜひご参照ください。

名古屋住宅ローン相談室代表のコメント

不動産の一括査定サイトは便利な反面、利用の仕方を間違えるとご依頼者様のリスクにもなります。ご注意ください。

不動産一括査定サイトで出た売却価格を軸に計画を立ててしまうとリスクを伴います

不動産一括査定サイトをそのまま使うと危険

不動産一括査定サイトで出た売却価格を軸に計画を立ててしまうリスク

不動産一括査定サイトで算出される売却価格は、相場よりもかなり高い金額で提示されることが一般的です。
理由は単純で、複数社の不動産会社を競わせることになるため、選んでもらうためにそれぞれがちょっとずつ高い金額を提示するからです。

(不動産一括査定サイトから提示される売却価格はあくまで予想であって、しかも、高めに出された予想なんだな)
とご理解いただいた上で不動産一括査定サイトをご利用になる方がいいかと思います。

具体例として弊社で承った案件をご紹介します。不動産一括査定サイトから出された売却価格を軸に計画を立ててしまったために、解決に時間がかかった事例です。

不動産一括査定サイトで出た売却価格を軸に計画を立ててしまうリスク:
参考事例

不動産の売却をご依頼いただいた案件です。離婚されるからという理由で、不動産の売却を進められていました。
この事例のご夫婦は、『住宅ローンが払えない』、という任意売却のご依頼ではなく、一般の売却のご依頼でした。

この案件は売却完了までに1年ほどという、通常よりもかなり長い時間がかかってしまったのですが、大きな原因の1つに、不動産一括査定サイトから提示された売却価格を元に計画を立ててしまった背景がありました。

【発生した課題①】
不動産一括査定サイトの売却価格を元に離婚時の財産分与を決めたことで、相場とかけ離れてしまった

離婚をきっかけに売却を決断したご夫婦は、 弊社にご依頼いただく前に、弁護士さんを挟んで離婚時の財産分与も決められていました。そして、その際、ご自宅の資産価値については不動産一括査定サイトから出された売却価格を元に計算されていました。

弊社にお越しくださった際にはすでに、この資産は旦那様、この資産は奥様、というように財産分与の内訳がほとんど決まっていたのですが、困ったことに、ご自宅の資産価値を実際よりもかなり高く設定されていたんですね。

具体的には、ご夫婦が事前に調べられた不動産一括査定サイトと、弊社で査定結果とでは、800万円近い差がありました。不動産一括査定サイトの方が高かったんです。
この800万円、何億円という売却価格に対する差額であれば誤差の範囲でもすみますが、この不動産の売却価格は、不動産一括査定サイトでも2,500万円に届かないくらいのものでした。住宅ローンも残っていたため、売却価格から住宅ローンの残債を支払う必要もあります。

【発生した課題②】
相場よりも高すぎる物件は買い手が決まらなかった

ご夫婦は、弊社で行った査定よりもかなり高い価格で売却を想定されていました。
それでも弊社では、一旦、ご夫婦がご希望される金額で販売を開始しました。何が起きるかはわからないですし、ご依頼社様のご希望に沿わない販売はしたくないからです。

不動産の全国流通ネットワークであるレインズに掲載することはもちろん、不動産一括査定サイトで査定金額を出した不動産会社全てにも、直接、「査定をされたこちらの物件が売りに出されたので販売活動をお願いします」とご連絡をしました。

しかし、数ヶ月経ってもまったく購入希望者は現れませんでした。

2,000万円台半ばほどの物件に対して相場よりも800万円ほど高い金額で販売しているわけですから、不動産を選定されているお客様にも見抜かれてしまっていたのでしょう。

【発生した課題③】
財産分与を決めてしまっていると、簡単に売却価格を下げられなかった

すぐにでも売却したい物件であっても、離婚の財産分与を決めてしまっている以上、簡単には販売価格を下げることができません。

不動産の販売価格を下げると、その分、他の資産の分配を変えていく必要が出てくるからです。住宅ローンの残っている不動産であるため、売却して黒字の資産になると思っていたものが、不動産を売却したお金で住宅ローンの残債を払いきれない場合には借金というマイナスの資産になります。

離婚の準備中ですからご夫婦の関係は円満ではありませんので、利害関係でギクシャクしてしまい、話は進みませんでした。

【発生した課題④】
1年近く経って、ようやく合意。相場に近い価格で売却が完了。1年分の住宅ローンや管理費を余分に払う結果となった。

不動産査定一括サイトから出された売却価格を元にして財産分与を決めてしまっていたため、売却価格を下げることができず、身動きが取れない状況が半年以上続きました。

その間に、はじめはお互い一方通行だったご夫婦の話し合いにもだんだん歩み寄りが見られてきて、販売開始から10ヶ月ほど経って、ようやく、弊社ではじめにご提示させていただいた売却価格に近い額まで売却価格を下げるという同意が得られました。
そこから先は2ヶ月経たないうちに引き渡しまで完了することができました。

長期間にわたる販売活動でご夫婦はかなりエネルギーを消耗された上に、既に引っ越されている元ご自宅のために、販売活動に動いている期間もずっと住宅ローンと管理費をお支払いいただくという、エネルギーも出費もかさむ形となりました。

不動産一括査定サイトで出た売却価格を軸に計画を立ててしまうリスク:具体例のまとめ

上記でご紹介させていただいたケースでは、不動産一括査定サイトから見積もられた売却価格をそのまま離婚時の財産分与に流用することが発端となり、

■ 買い手がすぐに見つからなかった
■ 売却価格を下げることで、当初取り決めた財産分与の再分配が必要になった
■ 販売活動期間が長引いたことで、住宅ローンと管理費を余分に支払わなければいけなかった
という課題が出てきました。

不動産一括査定サイトの売却価格を軸に計画を立ててしまうことでトラブルを招くケースは、少なくありません。
ご紹介した事例のような離婚時の財産分与、遺産相続、その他、売却を考えた場合に住宅ローンと売却価格のバランスを把握することに使ってしまうと、一般売却できると思っていたものが任意売却しかできない(※)、といった事態にもなってしまいます。
(※)売却価格と住宅ローン残債の差額分を一括でご用意できるのであれば、任意売却にはなりません。

不動産査定一括サイトの金額は本当に表面的な目安であるとご理解いただき、計画に用いる際には十分ご注意ください。

不動産一括査定サイトについて

不動産一括査定サイトの解説画像

ここからは、不動産一括査定サイトについてもう少し詳しくご紹介します。不動産査定一括サイトの活用の仕方についてもまとめるので、ご参照ください。
まずは不動産査定について、意外に誤解の多い注意点を解説します。

不動産査定の注意点1:
不動産査定価格は、販売予想価格

まず理解していただきたいのは、不動産の査定は、車や鞄・宝石などの査定とは全く別物だということです。

例えば車を売却する場合には、査定する会社がそのまま査定価格で買取をしてくれますね。売る側としては高く買い取ってくれた方がいいに越したことはないですから、高い査定価格を出してくれる会社に依頼した方がいいということになります。

一方で、不動産を売却する場合、査定する会社が査定価格そのままの金額で買取をすることはほとんどありません。査定する会社は、仮に売却依頼を受けた場合の販売予想価格を提示しているだけで、査定した価格で売却できると保証しているわけでもないのです。

車などを査定では査定価格はイコール売却価格になることに対して、不動産の査定では査定価格は単なる販売予想価格でしかない、という前提条件を理解してください。

不動産査定の注意点2:
高い査定価格には営業行為が含まれている

不動産の査定ではほとんどの場合、査定した会社が買取もするわけではないと説明しました。

不動産の売却は、売却依頼を受けた不動産会社と買主(買主の依頼した不動産会社)との交渉の元、成立します。
いくらの売却価格で買主が現れるのか、買主との交渉がどのように進むのかなど、不動産がいくらで売却できるのかは、実際のところ、売りに出してみなければわからないのです。

ここで、不動産会社としては、売主に依頼される案件がたくさん欲しい。
売却したい不動産を所有する売主から、不動産売却の依頼をもらえることが、スタート地点になるからです。

特に、最近の売主は、複数の不動産会社へ同時に査定依頼をすることが一般的になりました。
正直に相場価格で査定金額を出すよりも、(実際にこれでは売れない)とわかっていながらも高めの査定価格を提示した会社へお客様の依頼が集中することは事実であるため、高めの査定価格を出す不動産会社が増えていることは事実です。

不動産査定のまとめ

  1. 車などの査定では「査定価格=売却価格」であることに対して、不動産査定では「査定価格=単なる販売予想価格」でしかない。
  2. 不動産の査定で提示される高い査定価格には、営業行為が含まれている可能性が高い

不動産査定一括サイトについて

不動産の査定について意識していただきたいことを説明しました。
不動産査定一括サイトでは、「ネットで手軽」「顔が見えない」「複数社を同時に進める」という側面から、不動産査定価格を高めに出す傾向がさらに加熱します。

不動産査定一括サイトを利用されるときには「査定金額が高めに提示されている」ことを強く意識してください。

不動産一括査定サイトの活用法:
不動産一括査定サイトは目安金額を知るために使ったら○

不動産一括査定サイトでは複数の不動産会社を競争させるため、1社1社の不動産会社が実際の査定よりも高めに査定価格を提示する傾向が高まります。

不動産査定一括サイトは、このことを理解した上で活用するのなら役に立つ面もあるでしょう。
何かの目安金額が知りたい、
という場合です。

ただ、今はインターネットが普及しているので、売却したい不動産の相場は、ご自身で不動産の売買サイトを閲覧することでも感覚は掴めるかと思います。ご自身で相場を把握するために、不動産一括査定サイトと合わせて、ネット検索もご利用ください。
もちろん、お近くの不動産会社へ直接出向き、制約事例から相場を理解することも有効です。

不動産一括査定サイトのまとめ

  • 不動産一括査定サイトの査定結果は相場よりもかなり高く出される可能性が高い。目安を知るための活用なら◯
  • 相場を知るには、付近で売りに出されている不動産価格をネットで検索する方法も。不動産会社に制約事例を尋ねても◎

住宅ローンの残高について

住宅ローン残高の調べ方イメージ画像

不動産査定とは違い、住宅ローンの残高は確定している金額です。
不動産査定額は変動することもありますが、住宅ローンの残高は常に決まっています。

不動産の売却や、不動産を含めた財産分与、遺産相続などを行う場合には、この違いを念頭に計画を立て、後々のトラブルを避けてください。

ここでは、住宅ローン残高の調べ方をおさらいします。

住宅ローンの残高の調べ方

住宅ローンの残高の調べ方には4つの方法があります。
書類やインターネット上でも住宅ローン残高は確認できますが、よくわからない、という場合には、住宅ローンを借り入れしている金融機関の窓口に問い合わせたら、費用はかかってしまいますが、教えてもらえます。

住宅ローンの残高の調べ方1:郵送された返済予定表を確認

住宅ローンを契約した金融機関から返済予定表というものが郵送されているかと思います。返済予定表には、どのタイミングでどれだけ住宅ローンを返済し、どれだけ住宅ローンが残っているのかが記載されているので、確認することですぐに住宅ローン残高を把握することができます。

※変動金利型の住宅ローンでは、住宅ローンを組んだ当初に受け取った返済予定表通りに返済が続くわけではなく、借り入れ金利や返済額の見直しが定期的に行われます。住宅ローンの残高を把握する際にも、最新の状態を確認するようにしてください。

住宅ローンの残高の調べ方2:確定申告のために送られる残高証明書を確認

年に1回の確定申告用として郵送される残高証明書でも、住宅ローンの残高は確認できます。残高証明書は住宅ローン控除を受けるためにも欠かせません。

住宅ローンを契約した金融機関は毎年10月下旬ごろ、それぞれのご家庭へ残高証明書を発送しますので、ご確認ください。

住宅ローンの残高の調べ方3:借り入れ金した融機関の窓口で確認

返済予定表や、住宅ローンを契約した金融機関から郵送される残高証明書が見当たらない、という場合には、住宅ローンを契約した金融機関の窓口で残高証明書を発行してもらう、という手段もあります。

事前に準備するものの確認や、対応できる支店かどうかを確認の上、お問い合わせください。

住宅ローンの残高の調べ方4:ネットサービスに加入している場合はwebサイトを確認

住宅ローンを契約した金融機関のネットサービスに加入している場合には、webサイト上で住宅ローン残高を確認できることがあります。

住宅ローンの残高確認サービスがあるかどうかは金融機関ごとに異なるため、住宅ローンを契約した金融機関にそうしたサービスがあるのか確認することからはじめてください。

不動産査定一括サイトの特徴を知らないまま活用するリスク、また、不動産査定について知っておくべき概要をまとめました。
繰り返しになりますが、不動産査定で出た売却価格は目安の金額である一方、住宅ローンの残高は確定している金額です。

不動産の売却や財産分与等の際には様々な数字を照らし合わせることになると思いますが、目安の金額なのか、確定している金額なのか、この違いを認識しながら計画を立ててください。

名古屋を中心に、東海3県では弊社もご対応させていただけます。
お気軽にお問い合わせください。